公益社団法人 日本薬剤師会

日本薬剤師会の活動(全体像)

かかりつけ薬剤師・薬局の普及・推進

かかりつけ薬剤師・薬局は、患者さんが薬を安全・安心に使用できるよう、処方箋調剤を受けられる患者さん、在宅療養中の患者さんのサポートはもちろんのこと、市販薬に対するアドバイスや健康相談なども積極的に行っています。

健康サポート薬局の普及・推進

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう、国は住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みである「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。
厚生労働省が2015年10月に策定した「患者のための薬局ビジョン」においても、副題として「「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ」とされているとおり、地域包括ケアに対応した薬局の将来像として、2025年までに全ての薬局がかかりつけ薬局としての機能を持つことを目指し、薬剤師業務については従来の対物業務から、対人業務へのシフトが求められています。
そのような中、2016年には医薬品医療機器法施行規則が一部改正され、同年4月より健康サポート薬局が法令上に位置づけられました。健康サポート薬局とは、厚生労働大臣が定める一定の基準を満たしている薬局として、都道府県知事等に届出を行っている薬局のことです。
本会では、健康サポート薬局の周知と適正な運用に向けた取り組みを行っています。普及推進のために、健康サポート薬局であれば会員・非会員にかかわらず使用できる全国共通のロゴマークを作成し、データ提供を行っています。加えて、「健康サポート薬局」の届出要件の一つである研修について、本会が研修実施機関となり、2016年9月よりe-ラーニング研修を提供しています。

医療保険制度への取り組み

我が国には、世界に冠たる国民皆保険制度がありますが、人口の高齢化や医療の高度化などにより、医療保険財政の健全化が喫緊の課題となっています。薬剤師・薬局は、後発医薬品の使用や残薬の確認などに取り組み、医薬品の適正使用や薬剤費の削減に努めており、本会ではそうした会員の取組をサポートしています。
また、健康保険制度の維持や診療報酬改定などについて審議する厚生労働大臣の諮問機関「中央社会保険医療協議会」には、本会役員が薬剤師を代表する委員として唯一、参画しています。


薬学教育への対応

2006年4月の入学者から、薬学教育が4年制から6年制になりました。
これに伴い、5年次に薬局・病院各11週間の実務実習が必須となり、2010年5月からは、6年制教育のもとで初めての実務実習がスタートしました。
6年制課程における教育は、実務実習も含め「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づいて行われます。文部科学省においては「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」について、6年制実施後、2度目となる改訂作業が進められ、本会では、薬剤師の立場から必要な意見・提言を行ってきました。薬学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)は2023年2月に完成し、2024年度入学生から適用されます。
本会では、改訂カリキュラムに基づいた実務実習がより充実したものとなるよう、必要な準備・施策を推進しています。

薬剤師のための生涯学習推進

患者、国民の医療に対するニーズが多様化するなか、信頼され求められる薬剤師となるためには、一人ひとりが目標を定め日々研鑽を積むことが必要です。本会では、薬剤師のための生涯学習支援システム「JPALS(ジェイパルス)」をインターネット上で提供しています。学習の記録である実践記録(ポートフォリオ)の蓄積と、段階制の仕組みであるクリニカルラダー(以下CL)の活用を以て、薬剤師の資質向上に寄与し、国民の保健・医療・福祉に貢献することを目的としています。CLレベル5以上になると「JPALS認定薬剤師」として認定されます。
JPALS認定薬剤師制度は、薬剤師認定制度認証機構の認証を取得しています(認証番号:G25)。

また、本会では、都道府県薬剤師会が自県の会員、非会員に関わらず薬剤師に向けて研修を提供する場として、本会が発信すべき内容をコンテンツ化し、都道府県薬剤師会から全国一律の研修を実現する基盤とすることを目的に「日本薬剤師会研修プラットフォーム」を構築し、多くの都道府県薬剤師会が利用しています。


臨床・疫学研究の倫理審査体制の整備と研究活動推進

臨床・疫学研究の実施にあたっては、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に則って進めることが求められています。人を対象とする研究の場合、学会発表、論文投稿を行う際は、研究計画を立てる時点で、倫理審査が必要かを判断し、必要なものについては倫理審査を受けることが必須となっています。
本会では、研究者のための手順書や、本会や都道府県薬剤師会が倫理審査委員会を設置し審査を行うための手順書、倫理審査の申請書類等を整備し、臨床・疫学研究を推進する体制を整えるとともに、「臨床・疫学研究倫理審査委員会」を会内に設置し、倫理審査の申請を受け付けています。
また、生涯学習支援システム「JPALS」においても、薬剤師の研究活動の促進や、研究における倫理的配慮への意識を高めるための研修用のe-ラーニングコンテンツを配信しています。

医療安全管理体制の整備・充実

本会では、2001年4月より調剤事故事例の収集を行っています(ヒヤリ・ハッ ト事例<インシデント事例> は含まない)。報告された事故事例については毎年、発生地域や個人が特定されないよう配慮した上で都道府県薬剤師会へ情報提供し、同様な事例が発生しないよう注意喚起しています。
医療機関における医療事故及びヒヤリ・ハット事例は、日本医療機能評価機構が行う「医療事故情報収集等事業」において収集・分析・評価されています。集計結果は、定期的に同財団より報告書として公表されており、特に周知すべき情報については「医療安全情報」としてまとめられています。本会では、医療機関における医療事故及びヒヤリ・ハット事例についても、都道府県薬剤師会を介して会員に情報提供し、注意喚起を行っています。
また、医薬品医療機器法により、高度管理医療機器の販売には都道府県への許可申請が必要であり、販売業者には営業所管理者に毎年継続研修を受講させることが義務づけられています。本会では研修実施機関として「医療機器販売業等の営業所責任者、医療機器修理業の責任技術者 継続研修テキスト」の編集や実施要綱の作成を行い、都道府県薬剤師会において継続研修会を実施しています。

薬剤イベントモニタリングの実施

医薬品の適正使用に貢献することを目的として、2002年度からDEM事業を実施しています。DEM(薬剤イベントモニタリング:Drug Event Monitoring)とは、 薬剤を使用した患者さんに発現したイベントを薬剤師の視点で把握し、収集・解析することをいいます。毎年10万件を超えるイベントが報告されており、副作用・薬害の防止に向け、全国の薬剤師・薬局がDEM事業に参画しています。2017年度からは、新薬を対象としたイベント発現等の調査を実施しています。


アンチ・ドーピング活動の普及とスポーツファーマシストの養成

スポーツ競技における「アンチ・ドーピング」への意識が高まっています。医薬品の適正使用という観点から、薬の専門家である薬剤師がアンチ・ドーピング活動に関わることは、選手の健康やスポーツの健全な発展という意味からも、大きな意義を持つと考えています。
本会では、2004年度から薬剤師のアンチ・ドーピング活動に取り組んでいます。具体的には、日本スポーツ協会の協力のもとに「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック」を毎年作成してホームページに掲載しており、都道府県レベルにおいても、アンチ・ドーピングホットラインの設置・対応、スポーツファーマシストの活動推進等のアンチ・ドーピング活動を実施しています。また、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)により設立された「公認スポーツファーマシスト認定制度」に2009年度より協力しています。本認定制度については、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)からも、非常に先進的かつ他国のモデルになり得る制度として、評価されています。
本会では、薬剤師がアンチ・ドーピング活動を通じてより一層の社会貢献ができるよう、今後も関係団体と連携・協力して参ります。

学校薬剤師活動の支援推進

他国には例を見ない薬剤師の職能のひとつに、「学校薬剤師」があります。
従来の学校薬剤師は、学校の環境衛生検査等を通じ、児童・生徒が快適に学校生活を送れるよう指導することが主な役割でした。近年では、より幅広い活動が求められるようになっています。具体的には、医薬品適正使用の啓発活動、薬物乱用防止活動、飲酒・喫煙に関する啓発活動、アンチ・ドーピング活動、学校給食の衛生管理、学校での薬品・毒劇物の管理、建築物内の揮発性有機化合物やダニアレルゲン等への対策などです。
特に、学習指導要領(中学校:2012年4月施行。高等学校:2013年4月施行)により医薬品の使用に関する教育が求められるようになりました。これに伴い、医薬品の適正使用に向けた教育・啓発活動における学校薬剤師の役割がより重要になっています。
本会では、学校薬剤師の活動を支援すべく、教材の作成や研修会の開催等に努めており、学校薬剤師及び保健体育教諭・養護教諭等を対象とした「くすり教育研修会」を開催し、学校関係者との連携を深めています。

大規模災害への準備・対応

日本は地形上、大きな地震が発生するリスクを有しています。阪神・淡路大震災、東日本大震災や熊本地震などでは、たくさんの方が長期にわたる避難所生活を余儀なくされるなど、大きな被害をもたらしました。そのような中、医師や薬剤師など多くの医療従事者が地震によるけが、持病、体調不良などをサポートするために活躍しました。薬剤師の多くは避難所において、医薬品や衛生環境向上に関する、さまざまな活動を行いました。
被災地における主な活動内容は、○救護所における医薬品等の供給、○医療チームの避難所巡回に同行し、医療支援等の実施、○モバイルファーマシー(MP:災害対策医薬品供給車両)の出動、○避難所における一般用医薬品の供給、○被災者からの医薬品などに関する相談への対応、○エコノミークラス症候群予防のための注意喚起、○一般用医薬品等の集積所での仕分け・管理、各避難所への供給、○行政との支援調整等、○学校再開の際の水道水の水質検査、○避難所の二酸化炭素濃度測定などです。
2016年4月に発生した熊本地震では、本会は都道府県薬剤師会の協力のもと、延べ2,774人の支援薬剤師を派遣しました。