日本学校薬剤師会は平成24年4月より、公益社団法人日本薬剤師会学校薬剤師部会へ

学校給食の衛生管理について

日本薬剤師会学校薬剤師部会幹事
木全 勝彦

昭和29年に学校給食制度の確立とその普及充実を図るために「学校給食法」が制定されました。
 学校給食は、成長期にある児童生徒の心身の健全な発達のため、栄養のバランスのとれた食事を提供することにより、健康の保持増進を図るとともに、学校における食育の推進を図る上で、極めて大きな教育的役割を担っているといえます。
 そのため、その衛生管理については、衛生的で安全な食品を提供するとして、平成8年の腸管出血性大腸菌(O-157)の集団感染症の教訓を踏まえてハサップ(HACCP)システムが学校給食に取り入れられています。HACCPとは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理点( Critical Control Point )を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法であり、この手法は 国連の国連食糧農業機関( FAO )と世界保健機関( WHO )の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会から発表され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。
 そしてこうした学校給食の衛生管理については、平成21年4月1日に改正施行された学校給食法により大臣告示された「学校給食衛生管理基準」により衛生管理等を行うとされています。
 これより以前には(平成21年)、学校給食の衛生管理は、文部省体育局長制定の「学校給食衛生管理の基準」により管理が行われており、同じく局長制定の「学校環境衛生の基準」の中にも、「学校給食の食品衛生」として併記されていたこともあり、学校環境衛生管理の一環として学校薬剤師が学校給食の衛生管理についてもその責務を担っていました。
 しかし、平成21年4月施行された学校保健安全法により、新たに大臣告示となった「学校環境衛生基準」からは、旧来の「学校環境衛生の基準」にあった「学校給食の食品衛生」が省かれるとともに学校薬剤師の職務の中にも学校給食の明記がないこと、そして、学校給食は同日施行された学校給食法において大臣告示された、「学校給食衛生管理基準」により衛生管理等を行うこととされたこともあって、学校給食の衛生管理について学校薬剤師の関与が低下したのではないかと懸念しています。
 学校給食法の第九条で、学校設置者は、学校給食衛生管理基準に照らして適切な衛生管理に努めるものとするとされ、学校長または共同調理場の長においては基準に照らし、衛生管理上適性を欠く事項があると認めた場合は、遅滞なくその改善のため必要な措置を講じること、また必要な措置を講じることができないときは設置者に対しその旨を申し出ることが求められています。
 さらに「学校給食衛生管理基準」によれば、学校給食衛生管理責任者である栄養教諭・学校栄養職員においては、日常管理の状況を日々安全確認できているか、また、学校給食調理員においては、衛生管理に対する学習を行っているか、設置者等の実施する学校給食に関する教育研修をしっかり受けているか、またその研修会が確実に開催されているかなど、それぞれの立場に課せられた役割が求められており、同時にこうしたことが確実に実施されなければ学校給食の安全を守り、ひいては児童生徒の心身の成長を促し、命を守るということができなくなることもあると考えられています。
 しかし実際の学校での管理運用について見てみると、実施・報告がほとんどであり、本来は外部の衛生管理の専門家等による監査を含め、原因究明あるいは再発防止に対する指導・助言による改善が不可欠であるにも関わらず設置者・管理者・業者任せの状況が見られることは問題といえます。
 「学校給食衛生管理基準」の総則においても、衛生管理上の問題がある場合には、学校医又は学校薬剤師の協力を得て速やかに改善措置を図ることとあり、 さらに、第2学校給食施設及び設備の整備及び管理に係る衛生管理基準の2において、

学校薬剤師の協力を得て
(1)学校給食施設 の各号に掲げる事項について、毎学年1回定期に
(2)学校給食設備 及び(3)学校給食施設及び設備の衛生管理の各号に掲げる事項に
ついては、毎学年3回定期に、検査を行い、その実施記録を保管すること

とされています。
 給食担当者等の実施・報告・改善のみではなく、確かな根拠に基づいた衛生管理の徹底を図って改善していくことが重要であり且つ必要と考えられること、また、調理場外部の衛生管理の専門家に協力を依頼することは必要なことであり、保健所等の協力、助言、援助の他、学校医又は学校薬剤師の協力を得て速やかに改善措置を図ることがより重要といえます。
 そのためにも、学校薬剤師は「学校給食衛生管理基準」の理解を深めると同時に、確かな根拠に基づいた衛生管理の徹底を図るよう検査の実施並びに指導助言に協力する必要があるといえます。
 近年、ノロウイルス、ヒスタミン等による食中毒や異物混入問題など、調理場の施設・設備、職員等における衛生管理等が社会問題にもなっていることから、学校給食の現場ではその衛生管理について関係者による改善と管理の徹底が進められています。しかし、給食方式としてセンター方式が多くなったこともあり、受配校として配膳室のみの学校が多く見られるようになり、こうした学校での衛生管理は見過ごされがちになっている状況があります。
 学校給食は献立作成、物資選定、検収、下処理、調理、配送等、調理場の問題のみで完結するものではなく、その後の学校における保管・配食、喫食、回収をへて食器等の洗浄消毒、廃棄物回収など一連の流れがあることを今一度再確認する必要があります。
 特に、配膳室は、食品や食器を保管する部屋で、調理場の非汚染作業区域となっています。センター方式の場合、給食施設でないと勝手に解釈して見過ごされがちであり注意が必要で、受配校用(配膳室)の調査用紙を利用するなどして毎学期の検査を行うことが重要です。
また、受配校の配膳室には、

① 手洗い設備
② 換気設備
③ 直射日光を遮る設備
④ 衛生害虫等の侵入を防止する設備。
⑤ 温度計、湿度計
⑥ 非接触式温度計

の設備及び備品を整えることとされていますのでこうした点も確認する必要があります。
また、使用する水の遊離残留塩素濃度が0.1mg/L以上あることを日常点検で確認がされているか。給食施設においては日ごろから清掃に努め、食品が直接触れる棚等は必要に応じてアルコール等で消毒するなど清潔に心がける必要があることから消毒薬の適正な選択・使用等も指導いただければと考えます。
 さらには、給食当番等配食を行う児童生徒及び教職員の健康管理に努めることは重要で、給食当番等の健康状態等については、

① 下痢している者はいない。
② 発熱、腹痛、嘔吐をしていない。
③ 清潔なエプロン、マスク、帽子を付けている。
④ 爪は短く切っている。
⑤ 手指は洗浄し、消毒している。

といった点検項目に基づき、配食前にチェックし記録するとされており、下痢や腹痛、嘔吐などの症状のある場合は、給食当番を交替させることが必要となります。
こうしたチェック機能が適切になされているかどうかも確認し指導いただければ幸いです。
 最後に、学校薬剤師はその職務の中で健康相談、保健指導に従事することとされています。学校保健委員会や保健指導の時間を利用して給食当番や喫食する児童生徒の健康問題、児童生徒への手洗い指導、消毒薬の適切な選定及び使用方法の指導、マスク・帽子等についての衛生指導、吐瀉物への対応方法など、学校によってその対応や管理、指導等に違いがみられることからも、今後、統一した確かな知見に基づいた衛生指導の徹底を、教職員への指導を含めて図っていく必要があると考えます。
 また、学校給食における食物アレルギー対応についても、昨年12月にアレルギー疾患対策基本法が施工されたことにより学校での研修機会の確保といった問題が重要となっています。
 学校薬剤師としてアナフィラキシーに対するエピペンの指導等を含めてご協力いただければと考えます。よろしくお願いいたします。

(ラジオNIKKEI:2016.10.27放送)

学校における食物アレルギー・アナフィラキシーへの取り組み(日薬誌:10月号より)

国立病院機構相模原病院臨床研究センター
アレルギー性疾患研究部 海老澤 元宏

1)食物アレルギーへの対応

学童期の食物アレルギーは基本的には即時型の食物アレルギーが中心となり、病型としては即時型、口腔アレルギー症候群、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの3つに分類される。原因としては牛乳、鶏卵、小麦などが多いが、ソバ、ピーナッツ、甲殻類、果物など多岐にわたる。学童期の食物アレルギーは客観的な症状や食物経口負荷試験によって診断されているべきであり、IgE抗体陽性というだけで除去の指導が行われるべきではない。診断根拠を記入する欄も設けているのはそのような理由からである。学校生活上、最も問題になることは学校給食である。食物アレルギーへの対応の充実の基本はまず学校関係者に正しい知識を持ってもらうことから始めるべきで、その上で各給食センターや調理場の実態に合わせて対応できる範囲を定めていくべきである。家庭科で食物を取り扱う調理実習や牛乳パックの回収など食物アレルギー児にとって健康被害が引き起こされるような場面も学校生活では認められる。さらに一生に一度しかない修学旅行などに食物アレルギーが原因で参加できないようなケースも存在する。このように多くの課題を抱えているが、食物アレルギーの診療レベルの改善、保護者と学校関係者への正しい知識の普及により事態の改善が図られることを期待している。

2)アナフィラキシーへの対応

アナフィラキシーはアレルギー反応の最重症な症状として時には命に関わることもある緊急の対応を必要とする。アナフィラキシーの原因として最も多いのは、食物アレルギーであるが、そのほかにもハチ刺傷、運動、食物+運動(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)などが原因としてあげられる。有病率は0.14%である。アナフィラキシーの症状として最も危険なのは呼吸器系の症状として呼吸困難(喉頭浮腫、喘鳴など)を呈する場合である。学校関係者としてまず行うべきは症状の把握であり、重症度の適切な評価である。症状が出現した際には抗ヒスタミン薬やステロイド内服も必要だが、多臓器の症状を伴うアナフィラキシーではショックに至り生命に関わることもあるので緊急の対応が必要になる。2005年からわが国でも食物アナフィラキシーに対して自己注射用アドレナリン製剤(エピペン○R)が小児に対して承認された。ペン型のバネ仕掛けの注射器で0.3mgと0.15mgの製剤があり、素人でも簡単に太腿の外側にズボンの上からでも注射できる。使用するタイミングとしては喉頭浮腫や下気道の閉塞による呼吸困難等が出現した時が適応である。学校においては緊急時の対応(搬送先の確保、保護者との連絡など)は保護者との間で取り決めておくべきである。呼吸器症状が出現した際などのアナフィラキシー症状に対して患者自身と保護者が使用することは認められているが、学校生活においては薬剤の保管や緊急避難として学校関係者が使用することも取り組みガイドラインにおいて推奨されている。2009年からは救急救命士が業務としてエピペンを使用することも可能となっており、食物によるアナフィラキシー等の社会的な対応が進んできている。2011年の9月からエピペン○Rは保険適応となり、より多くの患者さん達が携帯しやすい状況となってきた。