ラジオNIKKEI(過去の放送分より)

学校給食 学校薬剤師に求められているもの ~学校給食衛生管理基準 平成21年4月施行~について

京都府学校薬剤師会 会長 守谷まさ子

平成21年以前に施行されていた「学校環境衛生の基準」に学校給食の定期検査が含まれていた事をご存じの先生方も多いことと思います。平成8年、腸管出血性大腸菌O-157はじめとする集団食中毒が発生して以来、学校給食においては、学校給食衛生管理基準の変更に次ぐ変更をした後、HACCPという方式を取り入れ、“菌を付けない、増やさない、殺す”という安全安心の至上命令を持って取り組む方向生を示しました。

平成21年4月に学校保健安全法が施行され、「学校環境衛生基準」と「学校給食衛生管理基準」が文部科学大臣告示となりました。学校薬剤師に「学校環境衛生基準」の「100%実施」が求められたことが特に大きく取り上げられたことから、「学校給食衛生管理基準」に期待された学校薬剤師の職能を知らずにいる先生方も多いのではないかと思われます。また新人の学校薬剤師の先生方にとって、現在の学校給食現場はどうなっているのか、初めて検査に入ることを考えると戸惑うことやわかりにくいと思われていることもあるかと思います。

今回は「学校薬剤師に期待されているところ」その具体的な内容について確認をしたいと思います。まずは学校給食法の目的、そして学校給食の基本である「学校給食衛生管理基準」について、最後に「学校給食現場の課題と学校薬剤師ができること」について話したいと思います。


はじめに「学校給食法の目的」についてですが、

平成21年に改正された「学校給食法」は、「学校給食が児童及び生徒の心身の健全な発達に資するもの」「学校給食の普及充実及び学校における食育の推進を図ること」を目的としており、そのために以下の7つの項目が示されています。


(1)適切な栄養摂取による健康の保持増進を図ること。

(2)日常にける食事について正しい理解を深め、健全な食生活を営むことができる判断力を培い望ましい食習慣を養うこと。

(3)学校生活を豊かにし、明るい社交性及び共同の精神を養うこと。

(4)食生活が、自然の恩恵の上に成り立つものであることへの理解を深め、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。

(5)食生活が食にかかわる人々の様々な活動に支えられていることについての理解を深め、勤労を重んじる態度を養うこと。

(6)我が国や各地の優れた伝統的な食文化についての理解を深めること。

(7)食料の生産、流通、及び消費について正しい理解に導くこと。


これらの目標を達成するためには、「学校給食衛生管理基準」に従った安全管理が極めて重要でありこの基準がすべての基本であります。

学校給食関係者は、学校給食法の規定に基づき、学校給食の衛生管理の充実に努めることが求められていることから、これまで文部科学省が作成した「4つのマニュアル」を熟知し、日々の学校給食事業に取り組んでいただきたいと思っています。

また、私たち学校薬剤師も学校給食の目指すところや、役割、現場の取り組み状況などその内容を知ることが大切です。

次に学校給食の基本である「学校給食衛生管理基準」について少しふれてみましょう。

内容は大きく分けて、第1の総則、第2は学校給食施設及び設備の整備及び管理にかかる衛生基準、第3は、調理の過程等における衛生管理にかかる衛生管理基準、第4は衛生管理体制にかかる衛生管理基準、第5は日常及び臨時の衛生検査、そして第6の雑則の6つの部分に分けられています。

第1の総則では、

「学校給食を実施する都道府県教育委員会及び市町村教育委員会、付属学校を設置する国立大学法人、および私立学校の設置者は、自らの責任において、必要に応じて、保健所の協力、助言及び援助を受けつつHACCPの考えに基づき単独調理場、共同調理場並びに共同調理場の受配校の施設及び設備、食品の取り扱い、調理作業、衛生管理体制等について実態把握に努め、衛生管理上に問題がある場合には学校医または学校薬剤師の協力を得て速やかに改善措置を図ること。」とあります。

ここで学校薬剤師には、学校給食の定期検査から、衛生管理上の問題がある場合に対して指導助言を行い速やかな改善措置につなげてほしいと期待されています。では、学校給食のどこに問題があるのか、学校給食現場のことや、目指す基準を十分に知り、学校給食現場の状況と比較し、どのような問題が発生したのかを分析し、解決方法やその根拠(理由)を現場に役立つ方法で提案しなくてはなりません。

それでは、少し項目についてふれてみましょう。すべての項目は「食中毒防止」「菌を付けない、増やさない、殺す」を目指した方法、注意すべきポイントとなっています。

「「学校給食施設の区分」では、汚染作業区域は、泥やほこりなど異物や有害物質が付着している食品を扱う場所であり、汚染作業区域と非汚染作業区域を調理作業で行き来すると、汚染が非汚染作業区域に持ち込まれ食中毒の原因となります。作業動線も同じように交差しないように考えることが食中毒防止に大切であるということです

「ドライシステムまたはドライ運用について」

ドライシステムはすべての調理機器からの排水が排水管を通じて流す方式です。細菌は水分と、栄養、25℃以上の温度があれば分裂を繰り返し、増殖します。床面を乾いた状態にすることで床からの跳ね水を防ぎ、二次汚染を防ぎます。細菌の増殖を抑えることは、食中毒の発生要因を少なくすることができます。

時間の(紙面の)関係で以上基準の一部について、お話しいたしました。

最後に学校給食の課題として、食物アレルギーについてお話しします。
ご承知のように、昨年12月に東京都調布市立小で5年生女児がアレルギー食材を含む給食を食べて死亡するという痛ましい事故があったことを受け、本年12月16日文部科学省から学校給食についての実態調査の結果が公表されました。

食物アレル―ギーを訴える公立小中高校生が4.5%(45万3962人)で、9年前から2ポイント増加し、「エピペン」(アレルギー症状を緩和する自己注射)を所持している者が0.3%(2万7312人)、症状や対処法を記入する管理指導表を学校に提出していたのは3割で、約6%の学校で学校給食の「誤食」が発生していたことも判明しました。その他さまざまな結果が出ていますが、この結果分析については今後発表される予定と聞いています。

学校給食における食物アレルギーの問題は
単独校、共同調理場において今後どのように対応するか、命に係わる内容であるだけに、給食事業の大きな課題として今後の対応に一定の方向性が出されることを期待したいと思います。

このような状況下学校薬剤師は学校給食において、給食の設備、施設、衛生管理については勿論、食物アレルギー対応についてや食物と薬の相互作用など様々な指導助言が可能であることを認識して頂き、常に学校職員として学校に寄り添った指導助言を発信して頂きたいと願っています。以上よろしくお願いいたします。


参考資料

文部科学省のマニュアル
H19 「学校給食調理場における手洗いマニュアル」、
H20/21 「調理場における洗浄・消毒マニュアルPartⅠ・PartⅡ」
H22「調理場における衛生管理&調理技術マニュアル」
H24 「学校給食 調理従事者 研修マニュアル」
日本スポーツ振興センター
「学校給食衛生管理基準の解説」「学校給食における食中毒防止Q&A」毎日新聞記事より

「風疹について」

一般社団法人 和歌山県薬剤師会  西前 多香哉

要旨(Summary)

今年、例年にないほど風疹が大流行しました。この感染症の背景には先天性風疹症候群を  恐れたための流産が増加しているという事があります。本来、この世に生を受け、この時代を担っていく子供たちです。風疹根絶のため、学校薬剤師として知っておかなければならない「風疹」について記載しました。



キーワード(Key Words)

風疹、感染症、母子感染、先天性風疹症候群、CRS、難聴、流行、三日ばしか、成人風疹、不顕性感染、妊娠初期、抗体価、再感染、自然感染、ワクチン接種、流産



元プロ野球選手の松井秀喜さんがニューヨークヤンキースに在籍していたころ、時を同じくして難聴の大リーガーがプレーしていたことをご存じでしょうか。

今日、お伝えするのは風疹のことで、独立行政法人 理化学研究所の理学博士である加藤茂孝先生に取材を申し込み、お話しいただきました内容と先生の著書である『人類と感染症の歴史-未知なる恐怖を超えて-』を元にお伝えしたいと思います。

近代、大リーガー史上、唯一の難聴プレイヤー、その人こそがカーティス・プライドさんです。彼は、母親が妊娠中に風疹に感染した、いわゆる母子感染による先天性風疹の難聴でした。95%の聴力を失いながらも、補聴器を付けプレーしていました。耳が不自由であることは野球選手にとって大きなハンデとなります。それでも、彼が野球を続けたのは自分が子供達に『信じていれば夢は必ず叶うんだよ』、『あの人が出来るのなら自分にも出来る』という事を思って欲しかったからです。

実は日本でも同じような事が起こっていました。米国で風疹が流行した1964年の翌年、沖縄で408人のCRS、いわゆる先天性風疹症候群の子供たちが生まれました。彼らが中学生になった1978年に、彼らのために聾学校の中等部が開校されたほどの多さです。そして、その学校に野球部ができ、高校野球大会出場までの苦難の道のりが本や映画やドラマになったほどです。本は『遥かなる甲子園―聴こえぬ球音に賭けた16人』という題で出版されています。その風疹が今年、例年にないほど大流行しました。加藤先生によると来年も流行がくるかもしれないと予想されています。

風疹は麻疹に比べて発疹の期間が3日と短く、三日ばしかとも言われていました。流行しやすい季節は春先です。ヒトの咳やくしゃみの飛沫に含まれたウイルスによってヒトに感染し、そのほとんどが小児期に感染するのですが、感染機会を逃して成人してから感染することがあります。成人風疹のほとんどが男性で、その場合には派手に発疹がでて、食事する元気もなくなるくらいで、約10%の患者が入院しなければならない状態にまでなります。

風疹感染による症状としては、潜伏期間が2週間から3週間で、鼻水、せき、発熱、発疹、リンパ節腫脹が出ますが、一般に軽症です。発疹は3日程度と短く、出ないことも多いです。目立った臨床症状が出ない不顕性感染例が小児で約30%、成人で約15%もあります。

風疹感染には抗ウイルス薬や治療法はなく、個々の症状に対する治療になります。先天性風疹の3大症状には眼の障害、心臓疾患、難聴があり、現在、これらは先天性風疹症候群としてまとめられています。その中でも難聴が圧倒的に多く、妊娠初期の12週までに感染すると障害の発生率が高くなっていきます。ウイルスが感染した細胞は細胞分裂が低下し、その結果、盛んな形態形成を行っている臓器ほど悪影響が出ます。ただ、形態形成が完成した月齢7ヶ月以降の感染では障害が起きません。

一つ目の障害である先天性白内障の場合には、人エレンズに替えます。心臓奇形の場合には、軽症であれば成長と共に自然治癒するのを待ち、自然治癒しなかった場合には、成長を待って心臓手術を行います。耳の場合には、高度難聴が多く、自然治癒は望めないですが、最近では、人工内耳を埋め込む治療方法もあり、以前に想像されたほど「運命的」なものではなく、治療による改善が望めるようになってきています。

私自身この風疹のイメージとして、一度罹れば二度と罹ることはないと思っていましたが、先天性風疹症候群の症例で1978年から2002年まで取られたデータにおいて、再感染かもしれない比率が9.8%と、常識を覆すような結果でした。自然感染やワクチン接種で獲得した抗体価が時間とともに減少し、再感染が起こりうるというものです。この再感染は発疹の出ることも少なく、自覚症状が少ないことが問題なのです。妊婦の再感染の場合、初感染に比べて頻度は低いですが、子供に先天性風疹症候群の症状が起こりうる可能性があります。

風疹と先天性風疹症候群の関係において、年度別の風疹患者数のグラフと先天性風疹症候群の患者数のグラフを重ねると、形状がほぼ一致します。一方、このグラフに国策であるワクチン接種の時期を重ねると、いかにワクチンが効果的であるか痛感します。

ワクチンが開発された当初、接種対象をどうするかの議論があったそうで、方式は二つありました。一つは男女の全幼児が対象の米国方式、もう一つは女子中学生のみに接種するという英国・日本方式でした。この二つの方式の差は10年後には顕著に出ました。米国では風疹の患者が激減し、その結果として妊婦も感染する機会が減り、先天性風疹症候群の出生がゼロ近くなってきました。もう一方の英国・日本式では、患者数は少し減ったけれども、流行の主体である幼児は野放しだったので、風疹流行は以前のように周期的に起こり、先天性風疹症候群の発生は、少しは減りましたが、なくなりませんでした。その後、英国と日本はこの結果から、全幼児を対象とする米国方式に変更しました。

日本において風疹は、かつては5年程度の間隔で全国規模の流行が繰り返されましたが、小児へのワクチン接種によって、全国規模の流行はなくなり、散発的な発生になっています。

当初は風疹単独のワクチンでしたが、麻疹、おたふくかぜと混合したMMRワクチンや、麻疹と混合したMRワクチンとして接種される事が多くなっています。日本では、MRワクチンを2006年から1歳と6歳の2回、また2008年から2013年3月までの5年間だけ、経過措置として中学1年と高校3年でも接種を行いました。

風疹の発生状況の把握のため、かつては登録された小児科医からの風疹患者の発生報告でしたが、2008年から患者発生は全例報告制度に切り替わりました。その報告によると2010年の患者数は87例でした。全幼児へのワクチン接種は効果覿面だったようです。

ただ、この87例を最小として、2011~2013年は患者が増え続けました。2011年は371例、2012年は小流行となり2,353例、2013年は13,000例を超過してしましました。この患者の8割弱は、成人男子です。これは、ワクチンが女子中学生へ接種されていた世代で、自然感染やワクチン接種で免疫を獲得できなかったグループです。悲しいことに2012年は先天性風疹症候群が6例ありました。2013年9月の時点で12人の先天性風疹症候群の患者が報告されています。

少し前に行政のトップが『風疹患者はまだ1万人程度、臨時接種は考えていない。』、『重篤な被害や死者が他の感染症にも出てきており、風疹だけ抜き出しては難しい』というような見解を出しましたが、米国や英国など多くの先進国は日本の風疹大流行を極めて憂慮しています。日本はウイルス対策後進国であり、日本への海外渡航を規制していた国もあったほどです。事の重大さを全く認識できていないように思います。風疹はどうせ「3日ばしか」程度で、大した病気ではないと考えられているのでしょうか。

風疹は大人が感染すると15%程度の人が、症状が出ない、不顕性感染者で、知らないうちに他の人に感染させたりしているように思われます。そして、それが、重大な先天性風疹症候群の発生につながっていくのです。厚生労働省は子供を望む男女に風疹の免疫を持っているかの調べる抗体検査の費用を全額負担するための予算を計上する予定ですが、これでは対策が不十分で、根本的な先天性風疹症候群の根絶には至らないように思われます。先天性風疹症候群は風疹の流行とともに増えるので、来年の流行を防ぐには、最も罹患者の多い20代~40代の男性を中心とした、風疹の免疫の無い人達へのワクチン接種の徹底が必要だと思われます。

実際に風疹で亡くなった方はいらっしゃらないようですが、風疹の流行した年は、流産も増えるそうです。1978年から2002年まで取られたデータにおいて、加藤先生の推計によると、先天性風疹症候群の患者1人に対して、約60件の流産が発生するそうです。言い換えるならば、12人の先天性風疹症候群の患者に対して、720名の尊い命が消えているのです。風疹と先天性風疹症候群と流産の関係を知れば、1万人程度などと軽はずみな言葉は出てこないように思います。

本来、この世に生を受け、この時代を担っていくかもしれない子供たちなのです。したがって、「風疹を軽視しないで欲しい」という加藤先生の言葉を学校薬剤師として伝えていければと思います。

風疹の根絶には風疹の抗体価が十分でない成人を対象に無料で一斉にワクチン接種を行う必要があります。

加藤先生は学校薬剤師に対して、「先天性風疹症候群の根絶のため、また風疹・麻疹排除のため、ご尽力戴ければ嬉しいです。」とのご伝言をいただきました。

最後に、加藤先生へ、取材に快く応じて下さり、感謝申し上げます。

薬学の時間  顔の見える学校薬剤師~薬物乱用防止教室と総合的な学習の時間~

一般社団法人 埼玉県薬剤師会 学校薬剤師委員会委員長 白石 美智子

みなさん、こんばんは。埼玉県薬剤師会学校薬剤師委員会委員長の白石 美智子です。
平成25年度埼玉県薬剤師会の一般社団法人化に伴い、新しく埼玉県薬剤師会学校薬剤師委員会がスタートしました。

さて、埼玉県の教育委員会主催、学校薬剤師研修会は平成17年度より文部科学省の薬物乱用防止教育推進事業として薬物乱用防止教育の授業の進め方を重点的に取り上げ、今年で10年になりました。

現在埼玉県の小学校、中学校、高等学校における薬物乱用防止教室の開催状況は100%であり、年1回以上の開催を学校保健計画に位置付けることとなっています。

研修会の始めの頃は小学校、中学校、高等学校向けに、シンナー・飲酒・喫煙・覚せい剤・薬物などのテーマで授業の実践例の資料を作成し、学校薬剤師がすぐ講師を務められるような内容にしました。また、生徒のみでは無く、できるだけ多くの保護者にも参加してもらうように指導しており、学校開放日や参観日に開催している例が増えていることは良い傾向と言えるでしょう。

実際に講師を依頼された場合の留意事項として、生徒の発達段階に応じた内容を説明するよう注意することや薬物乱用防止教育は第一次予防が目的であることから、薬物の入手方法、使用方法、更生、社会復帰に関する情報等には十分注意をすることが挙げられます。

私の担当校は高等学校と小学校です。

薬物乱用防止教室はそれぞれ年1回、高等学校は1・2年生に小学校は6年生を対象に講師を依頼されており、もう10年以上になります。

薬物乱用防止教室の授業をするときは、児童生徒の実態を知ることが大切ですから、必ずアンケートをとって、その時の児童生徒の薬物に対する知識を把握することにしています。白衣を着ることも忘れません。

最近の高等学校の講演は基本的な乱用薬物、最近の乱用薬物の傾向を説明し、続いて東京都福祉保健局作成のDVD「ドラッグの真実」副題 ~あなたはドラッグのリスクを知っていますか~を流しています。このDVDはドラマ形式のコントに続き薬物の専門家が解説していてとても分かりやすく好評です。

昨年度は「脱法ドラッグについて ~精神科臨床からの報告~」と題して、埼玉県立
精神医療センター 副院長 成瀬暢也氏がご講演されたものを伝達講習の形で行いました。「我が国の薬物患者の使用薬物は、この数年の間で脱法ドラッグが増加し覚せい剤に次いで第2位となっている。脱法ドラッグは、入手の容易さ、罪悪感の希薄さなどから急激に拡大しており、近いうちに第1位になる可能性があるだろう。脱法ドラッグはダウナー系とアッパー系の両方を合わせた性質の物が多く、薬物の名前や性質がわからない上に、尿検査での検出が不可能なので、治療が難しい。既存の薬物よりも強い依存性があり、精神作用も大麻の20~60倍と強力で、急性中毒で生命の危機をきたすことがある。激しい興奮状態により暴力行為に及ぶ、といったことが臨床上の問題となっている。

薬物依存の治療に於いては、底つきを待つのではなく動機づけを積極的に行うことが必要であり、認知行動療法が主流になりつつある。

しかし、依存者の治療を困難にしている最大の原因は、依存者に対する陰性感情、忌避感情であり、依存症からの回復には他の人からの癒しや安らぎが必要である。そして、未成年の薬物乱用を防ぐためには、大人たちが彼らに対して正直で誠実であることが重要である。」といった内容です。

今年のお正月、マダガスカルから帰国する時、トランジットでバンコック空港に寄りました。その免税店に並んでいたタバコのパッケージにショックを受けました。その箱には全面に肺がんや喉頭がん、皮膚がんなど、重症の癌患者の病巣の写真や子供を片手に抱いてもうもうとタバコを吸っている写真などが貼ってあり、たばこを吸っているとこうなりますよという文字もありました。こんなパッケージでも、タバコが売れるのかとびっくり。早速証拠写真を撮ってきました。

そんなこともあり、今年は高等学校でもたばこの害について取り上げ、このショッキングな写真を見せると共に、北海道薬剤師会作成の小学生向け「たばこの害」というアニメのCDを敢えて高校生に見せてみました。結果、目パッチリで大爆笑の大うけでした。大いに効果があったことを確信しました。日本のような「健康に害があります」と小さな文字で書いてあるのとは段違いですね。


小学校の薬物乱用防止教室では、やはり先生からのアンケート結果の話に続き、自分で作成したパワーポイントを主体に、先ほどのアニメのCDを放映したり、薬物の影響で発症した癌の写真集も参考に見せています。また、時間が許せば、文部省の委託により日本学校保健会が企画した薬物乱用防止ビデオ「ストップ・ザ・薬物」を放映します。これは、私も作成委員会委員として関わったもので、シンナー・たばこ・飲酒・覚せい剤について小学生が謎解きをしながら学んでいく、ドラマとアニメ形式のわかりやすい資料です。10年以上前になりますが、全国の公立小学校に配布されていますので、探してみてください。 最後に、薬物を誘われた時の断り方や薬物のクイズなどで締めくくります。

そして、最近は総合的な学習の時間「わかあゆ学習」での講演も依頼されているのです。これは、「未来に向かって」というテーマで自分の将来の夢について考えたり、自分の特性から、なりたい職業を考えるなど素晴らしい授業です。

担任の先生から、この授業について課題、めあての説明があり、その後白石が次のテーマで話をすることになります。

その内容は

① 薬剤師の仕事内容ややりがい、魅力、苦労など
② 私の12歳ころの夢について
③ 子供たちへのメッセージ

です。

最近はテレビでも「薬剤師に相談して下さい」というテロップが流れるようになり、幾分身近な存在になっていると思いますが、「薬剤師はどんな仕事だと思いますか」と聞くことから始めます。

やはり病院や薬局の薬剤師を知っています。その他、製薬企業で薬の開発をしたり、販売に際して薬を管理したり、薬の情報を提供する薬剤師、役所や保健所など行政の薬剤師、学校薬剤師などいろんな分野で活躍していることを話します。

薬剤師のやりがいはしっかりした薬情報を伝えることや薬の相談にのって患者さんが喜んでくださることなどがあり、薬が効いて元気になっていくのを見ることが嬉しいことです。また、沢山の薬があるので、間違いなく調剤すること、副作用や薬の飲み合わせなど注意することも大切ですと苦労話も伝えます。

12歳のころの夢については、戦後間もなく、学校も教室が足りなくて2部授業だったり、生活することが大変な時代だったことなどを伝え、将来の夢は考えていなかったと説明。今、6年生でもしっかり将来の目標を言える人が多いのは素晴らしいことだと話しています。

私についていえば、6年生頃叔父と本屋さんに行って、「なんでも好きな本を買っていい」と云われたとき、キュリー夫人の伝記を買って貰ったことがあり、その本は今でも思い出しますが、なんとなく科学者に憧れていたのかもしれませんねと説明しました。

最後に子供たちへのメッセージとして、信州別所温泉安楽寺の住職が書かれたことばを、送っています。それは

本気  本気ですれば大抵のことができる  
本気ですれば何でもおもしろい  
本気でしていると誰かが助けてくれる 

です。

先生も「最近の子供に欠けているのは、本気ですね。とても良いメッセージを頂きました」と喜んでくださいました。

毎回、全員の色つきイラスト入りのお礼状を頂くのですが、しっかり理解してくれており嬉しい限りです。最近は3,4人が薬剤師になりたいと手を挙げてくれます。

卒業式のご案内を頂くので、出欠に関わりなく学校薬剤師として祝電を打つことにしています。読み上げて頂いたり、掲示されたり、学校薬剤師のアピールに最適です。
これこそ、目に見える学校薬剤師活動になるのではないでしょうか?

今後、薬剤師を目指した子供たちが満足できるような社会になってほしいと思っています。


学薬アワー「第四次薬物乱用防止五か年戦略」に基づく今後の薬物乱用防止教室

公益社団法人 日本薬剤師会 学校薬剤師部会 幹事 田中 洋介

みなさん、こんばんは。日本薬剤師会 学校薬剤師部会幹事の田中洋介です。

本日は、「第四次薬物乱用防止五か年戦略」の解説と、新人学校薬剤師が、薬物乱用防止教室を行うための準備についてお話いたします。

青少年による薬物乱用の根絶と意識の向上を第一目標に平成9年、内閣府に薬物乱用対策推進本部が設置されました。

現在では平成25年に作成された「第四次薬物乱用防止五か年戦略」の中で、薬物乱用を防止するための5点の戦略目標が推進されています。

その中で、学校薬剤師に期待されている薬物乱用防止教室の記述について解説してまいります。

今回の「五か年戦略」には、冒頭に「合法ハーブ等と称して販売される薬物等、新たな乱用薬物への対応」が記載されています。いわゆる脱法ドラッグの被害が、急速なスピードで社会問題化されていることがうかがえます。乱用防止にむけた戦略目標の中の小項目にも「合法ハーブ等と称して販売される薬物等、多様化する乱用薬物に関する啓発等の強化」が新しく記載されました。ここでは、薬物乱用防止教室において、いわゆる脱法ドラッグの健康被害事例についての情報提供を積極的に行うこと、害性・危険性についての正しい知識の普及を図ることが記載されています。昨年公布された薬事法改正(いわゆる脱法ドラッグ法案)や最新の脱法ドラッグでの事故や事件を、授業に盛り込むことが必要でしょう。

ここでは他に、「学校における薬物乱用防止教育及び啓発の充実強化」についても記載されています。「薬物乱用防止教室は、学校保健計画において位置付け、すべての中学校及び高等学校において年1回は開催するとともに、地域の実情に応じて小学校においても開催に努める」と記載があります。
実はここで、薬物乱用防止教育の内容に関しても、次のように記載されています。「児童生徒が、薬物乱用の有害性・危険性のみならず、薬物乱用は好奇心、投げやりな気持ち、過度のストレスなどの心理状態、周囲の人々の影響や人間関係の中で生じる断りにくい心理、宣伝・広告や入手しやすさなどの社会環境などによって 助長されること、また、それらに適切に対処する必要があることを理解できるようにし、それらの知識を活用する学習活動を取り入れるなどの指導方法の工夫が行われるよう一層の周知を図る。」

すこし分かりにくい文書ですが、これは、WHO(世界保健機関)が推奨する「学校における青少年のためのライフスキル教育」と同じことが記載されているのです。健康増進のための重要な5つのライフスキルを授業の中で育成することで、薬物乱用防止の効果を期待するというものです。

ここでいう5つのライフスキルとは、意思決定をする能力、創造的思考をする能力、コミュニケーションをする能力、自己認識をする能力、感情やストレスをコントロールする能力のことです。

現在では、様々な形のライフスキル教育が研究され、薬物乱用防止教室においても、タバコのポスターの広告分析をしてみたり、どのような心理状態で薬物に手を出すのかを生徒同士で討論してみたりと、新しい取り組みが多く行われているようです。そもそもライフスキル教育が行なわれるようになったきっかけは、単に喫煙の影響に関する情報を与えたり、動物実験を用いて恐怖心を引き起こす手法の活用では、喫煙を防止するどころか、逆に助長する場合さえあったという欧米においての喫煙防止教育の失敗だといわれています。この失敗を踏まえた研究の結果生まれたのがライフスキル教育なのです。
さて、前述した内容を薬物乱用防止教室で行う時、いくつかのハードルがあります。通常、学校保健委員会の作成する学校保健計画では、薬剤師が行う薬物乱用防止教室は「特別活動」、「総合的な学習の時間」、「道徳」で計画され、50分程度だと思われます。その中で、前述の脱法ドラッグの健康被害事例についての情報提供や、有害性・危険性についての正しい知識の普及は可能かもしれません。ライフスキル教育について少し触れることも可能でしょう。しかしながら、それだけを話に唐突に組み込むことには無理があります。やはり、脱法ドラッグの使用者の、ほとんどが喫煙者 であることを考えるとタバコの話もする必要があり、薬物全般の話も必要でしょう。東京オリンピックも控え、小・中学生に対してもドーピング問題を話題に加えたいところです。やはり、事前に学校側から情報を得て、担当者と十分な打ち合わせを行い、通常の授業で行うことと、薬剤師が薬物乱用防止教室で行うこととのすみわけが重要でしょう。

さて、それらをふまえて、ここからは、はじめて薬物乱用防止教室を行う学校薬剤師に向けて事前準備についてのお話をしたいと思います。事前準備で薬物乱用防止教室の8割の成否が決定するといわれています。まず、事前に入手すべき情報として生徒の学年や人数、保護者の参加はあるか、対象学年の教科書の内容、過去の薬物教育実施状況と内容、生徒の実態、地域の薬物乱用の状況など、対象者についての確認です。また、日時や、実施場所、使用可能な講演機材、講義型なのか、ワークショップ型なのか、事前、または事後アンケートの実施が可能かどうか等、様々な情報を精査して、学校薬剤師は内容の設計を行う必要があります。学校の希望する内容に、疑義を生じた場合、薬剤師らしく、学校の担当者に疑義紹介を行い、学校薬剤師の設計する内容を提案することも考えられるでしょう。講演の最後には質問を受け付ける時間も確保しておきましょう。

いずれにせよ、学校の希望のまま、出来あいのスライドや資料で完結させることは、もっとも行ってはいけない薬物乱用防止教室であるといえるでしょう。

一年に一度の運動会に、母親が一所懸命に手作りのお弁当をつくるように、学校薬剤師も、その時、その子たちのために、一所懸命に作ったスライドは、必ず、子供たちの心に訴えかけ、そこからライフスキル教育が始まるのだと考えます。
スライドは、分かりやすい言葉を使い、事前に学校に確認してもらうことも大切です。

さて、講演イメージが確定すると、二週間前までに「講演タイトル」「講師プロフィール」を学校に提出します。早めにこれを提出することで、「学級通信」や「保健便り」等で父兄がそれを目にすることとなります。この時、興味をそそるタイトルにすることで、家庭内で、薬剤師の行う薬物乱用防止教室が食卓の話題になってほしいものです。興味深いタイトルで、子供たちが、教室に入る前からワクワクし、ドキドキし、「早く聞きたい」と思わせることが必要です。最後に、講演機材のセッティングについてのお話をします。平成21年度補正予算において、「スクール・ニューディール構想」が承認され、ほとんどの学校に電子黒板や、高性能プロジェクターが設置されています。現在では、プレゼンテーションソフトを使用した薬物乱用防止教室が主流となりました。そこで、当日は講演機材の動作確認はもちろんですが、スクリーンにあかりがさしこまないように、カーテンや照明に気を付けます。場合によっては、その場でスライドの背景を変更する必要もあります。スクリーンの高さや、スピーカーの音量もしっかり確認してほしいものです。前に座る生徒の頭で隠れない程度の高さにスクリーンをセットする必要がありますが、あまり高い位置にセットすると、目線が上を向くので、冬場はとくに目が乾きやすく、生徒が集中できないこととなります。

薬の専門家である薬剤師が、日々研鑽を積み“伝えることのできる講師”として公衆衛生の向上に寄与することは、本来の薬剤師の責務であり、若い学校薬剤師の皆さんにも、是非「薬物乱用防止教室」を通して、積極的に地域や学校と関わることで、薬剤師職能を発揮して頂ければと考えています。

ありがとうございました。