公益社団法人 日本薬剤師会

学校薬剤師とは

学校にいる薬剤師・学校薬剤師

学校保健安全法で大学以外の学校(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校)には学校薬剤師の設置が義務付けられています。また、認定こども園も同法が準用され、学校薬剤師を置かなければなりません。

学校保健安全法

第23条 学校には学校医を置くものとする。

2 大学以外の学校には学校歯科医及び学校薬剤師を置くものとする。

3 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、それぞれ医師、歯科医師及び薬剤師のうちから任命し、又は委嘱する。

4 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する。

どうして学校薬剤師が必要になったの?

1930(昭和5)年、小樽市の小学校で風邪をひいて体調の悪い女子児童に「アスピリン」を服用させるつもりが誤って塩化第二水銀(昇汞・毒薬)を服用させたため、女子児童は亡くなってしまうという痛ましい事故が起きました。いろいろな薬を保管している学校にクスリの専門家を置くべきだという声が高まり、学校に薬剤師を配置することになり、昭和6年に小樽市が学校薬剤師を委嘱しました。
その後、この流れは全国に波及しました。そして昭和33年には学校保健法が制定公布され、学校には学校医、大学以外の学校には学校歯科医又は学校薬剤師を置くものとする。と定められました。

学校薬剤師は学校で何をしているの?

学校薬剤師誕生の経緯から当初は学校薬事衛生(薬品類の使用・保管等)に関する職務に従事していましたが、1958(昭和33)年公布の学校保健法には学校薬剤師の職務として、学校環境衛生(換気、採光、照明など)の維持管理に関する指導・助言者としての職務が義務付けられました。
2009(平成21)年、学校保健安全法及び学校保健安全法施行規則が新たに施行され、学校薬剤師の職務は学校環境衛生に加えて、健康相談、保健指導にも従事するよう求められています。

薬局や病院の薬剤師と学校薬剤師は違うの?

学校薬剤師は、普段は薬局や病院に勤務する薬剤師がその任にあたっていることが大多数であり、薬剤師でなければなることはできませんが、薬剤師であれば誰もがすぐに学校薬剤師として活動できるという訳ではありません。学校薬剤師の職務は環境衛生への関与が主体となるので通常の医薬品に関する薬剤師業務ではなく衛生化学の知識を駆使しなければなりません。また、健全な学校保健の維持・推進は発育・発達の重要な時期にある児童生徒達にとって欠くべからざるものであり、生涯を通して健全な生活・学習を営むことができるような知識や体験となるべきものでもあり、学校薬剤師には、

  • 教育にふさわしい人間性を持つ
  • 教育に正しい理解を持つ
  • 職務に必要な知識の研鑽(講習会、研修会への参加)

が必要とされています。

環境衛生ってそんなに大切なの?

2008(平成20)年1月の中央教育審議会答申「子どもの心身の健康を守り、安全・安心を確保するために学校全体としての取り組みを進めるための方策について」の中で、学校環境衛生の維持・管理は、健康的な学習環境を確保する観点から重要である。と提言されました。
この答申を踏まえ、近年の児童生徒等の健康・安全を取り巻く環境の変化にかんがみ、学校保健及び学校安全に関して各学校で取り組まれるべき事項について学校の設置者並びに国及び地方公共団体の責務を定めた「学校保健安全法」が平成21年4月1日から施行されました。

どんな検査をしているの?

学校では学校保健安全法第5条の規定により、学校の学校環境衛生活動の1年間の計画「学校保健計画」を策定しなければなりません。学校薬剤師はその計画に基づき、同法第6条の学校環境衛生基準に基づいた学校保健安全法施行規則に従って学校環境衛生検査を実施しています。
なお、2019(平成30)年の学校環境衛生基準の見直しにより、教室等の温度などの改訂が行われ、同年4月1日より施行されています。

学校環境衛生基準

  1. 教室等の環境に係る学校環境衛生基準
    • 換気及び保温等
    • 採光及び照明
    • 騒音
  2. 飲料水等の水質及び施設・設備に係る学校環境衛生基準
    • 水質
    • 施設・設備
  3. 学校の清潔、ネズミ、衛生害虫等及び教室等の備品の管理に係る学校環境衛生基準
    • 学校の清潔
    • ネズミ、衛生害虫等
    • 教室等の備品の管理
  4. 水泳プールに係る学校環境衛生基準
    • 水質
    • 施設・設備の衛生状態
  5. 日常における環境衛生に係る学校環境衛生基準
    • 教室等の環境
    • 飲料水等の水質及び施設・設備
    • 学校の清潔及びネズミ、衛生害虫等
    • 水泳プールの管理
  6. 雑則(臨時検査)

以上の項目が規定されています。

環境基準を守る意義は?

教室での1時間の授業中に児童生徒等の呼気で二酸化炭素の放出はもちろんですが、もしそこにインフルエンザ等のウイルスが放出されれば教室内全員に感染のリスクを負わせてしまいます。このようなことからも清潔な外気を取り入れる換気の大切さが理解できます。
保温については暑すぎたり寒すぎたりすれば授業に集中できないことは理解できると思います。
照度面では明るすぎたり暗すぎたりしたときの目への負担や黒板とノート等を交互に見続ける際の照度差や視界にまぶしさを発する光源があれば目への負担は大きなものになります。
騒音の検査は教師の声の音量を基準に一定の音量差(この差がないと教師の声が聞き取り難くなります。)を確保できているかを調べます。
飲料水の安全は重要です。施設の老朽化等で配管に異常が生じることや工事等によって配管に異常を生じることもあります。また、生徒数の減少で水の使用量が極端に少なくなった場合には受水槽の容量が適切かどうかの検討が必要になってきます。
水泳プールでは施設設備の維持管理についてはもちろんですが水質の管理も重要です。

健康相談や保健指導ではどんなことをするの?

学習指導要領の改訂に伴い、2012(平成24)年度から中学校保健体育で「医薬品の正しい使い方」の学習が組み込まれました。生涯を通してくすりから無縁で過ごすことは考えられません。くすりは正しく使えば薬ですが誤った使い方をすれば害を及ぼすこともあります。また、危険ドラッグや違法薬物乱用などの防止活動も行っています。クスリの専門的知識を持っている薬剤師と教師とがチームを組んで(チームティーチング)くすり授業への参加や補助資料作成のお手伝いをしています。

薬に関わる仕事はしてないの?

学校薬剤師制度が始まるきっかけになったのは医薬品管理体制の不備によるものでした。学校には保健室の医薬品、理科・化学実験室の薬品、プール水の消毒等の薬品類や園芸用薬品など、多くの薬品を所有しています。それらの使用、保管などの指導や助言に当たっています。